いつも御喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について感謝しなさい。�Tテサロニケ５：１６〜１８

ハレルヤ！みなさん、おはようございます。今日は、�Tペテロから御言葉を取り次ぎたいと思います。このペテロはあのイエス様の弟子、お調子者のペテロです。聖書では彼のエピソードをいくつか書いていますが、ある時は、イエス様が自分の足を洗おうとするので驚きました。しかし、イエス様は足を洗わなければあなたと何の関係もないと言われたので、「体全身洗って下さい！」とイエス様の言葉の意味をまるで理解していませんでした。またある時は、「死ぬまでついていきます！」と言いながらも本当にイエス様が十字架に掛かられる時、あれだけお慕いしていたイエス様を3度も「知らない」と言って否定しました。そのような、弟子の中では特に出来の悪いようなペテロがこの手紙を書いています。

この手紙の内容は、紀元一世紀頃が舞台です。イエス様が復活し天にあげられてから沢山の教会が出来て、イエスキリストを信じる者達が増えていきましたが、その大きなリバイバルの働きとは反対に、キリストに従ったクリスチャンを迫害する者達が増えていきました。最初はユダヤ人の手によって広がっていきましたが、迫害の頂点に達したのは、その当時の皇帝を拝もうとしないクリスチャンを帝国から排除しようと、ローマが決定した時でした。うちたたかれて、投獄されて、死ぬものも出てきている中でペテロは、教会が離散していくのも見てきていました。そんな状況の中でペテロの信仰はどうなっていたのかというと、消えることなく燃やされていたのでした。そして、散り散りになったクリスチャンに励ましのメッセージを送ろうと書いたのがこの、ペテロ手紙�Tの内容です。

先週の木曜日京成ローザで「沈黙」を見てきました。この話も遠藤周作が17世紀の日本の史実・歴史文書に基づいて創作した歴史小説で、江戸時代初期のキリシタン弾圧の話です。

その迫害の渦中(かちゅう)にポルトガル人の司祭が置かれて、彼を通じて信仰について描かれた映画でした。主人公の司祭や、その司祭をかくまった村の隠れキリシタンたちが弾圧にあい、苦しんでいく様子は見るのもつらいものでした。結局この作品は、ハッピーエンドで終わる話ではありませんでしたが、最後はその主人公は、その苦しみを沈黙しておられた神様が、遠くにいたのではなくて、共にその苦しみを味わっていたのだという結論に至ります。聖書のこの当時の迫害も、恐ろしく苦しいものだったと思います。しかし、彼は絶望の中にキリストが復活したことを信じて、教会に慰めと励ましを送り、キリストに忠実であり続けるように勧めたのです。1章〜2章の前半までが、救われた者に対する神様の祝福、2章後半から4章まで、苦しみのただなかにあるクリスチャンの振る舞い、そして5章は苦しみのただなかにある神の民の羊飼いについて語られています。今日は2章なので、苦しみのただなかにあるクリスチャンの振る舞いについてみていきます。聖書を見ていきましょう。18節です。

2:18 しもべたちよ。尊敬の心を込めて主人に服従しなさい。善良で優しい主人に対してだけでなく、横暴な主人に対しても従いなさい。
当時の文化では、個人の家に奴隷がいることは当たり前でした。ペテロはそんなしもべたちに対して善良な主人だけではなくて、横暴な主人に対しても従うことを進めています。この2章の内容は、クリスチャンの振る舞いについてペテロが語っている所ですから、確かにクリスチャンとしての振る舞いとしては、証になる行動でしょう。しかし、善良な相手に従うことはとても容易いことでも、横暴な主人に対しても同じように忠誠を尽くすことは簡単なことではありません。横暴な主人だということは、一緒にいることすら難しい相手です。それを、従うように勧めるのですから、特別な理由があるに違いありません。ペテロはその理由を次のように述べています。

19節〜20節です。
2:19 人がもし、不当な苦しみを受けながらも、神の前における良心のゆえに、悲しみをこらえるなら、それは喜ばれることです。
2:20 罪を犯したために打ちたたかれて、それを耐え忍んだからといって、何の誉れになるでしょう。けれども、善を行っていて苦しみを受け、それを耐え忍ぶとしたら、それは、神に喜ばれることです。
2:21 あなたがたが召されたのは、実にそのためです。
罪を犯してその罰を耐えることには何の輝きはなく、当たり前のことですが、善を行って苦しみを受けることは神に喜ばれるとペテロは言っています。まったく意味の分からない話です。私たちが苦しみに合うことが神様の喜びなのでしょうか？この個所だけを見るのならば、誤解を生んでしまう内容です。
今の日本の中では主人と奴隷の関係はありませんが、職場の中では命令をする側とそれに従う側があったり、身近な人間関係でも横暴な人や、性格が気になる人とも生活を共にしていかなければならない場合があります。そんな相手に従うことが、神の喜びだとペテロはここで言っているのです。一回読んだだけではなぜそうなのか分からなくなってしまいますが、ここでカギとなる言葉は、19節の「神の前における良心」です。

イエス様が地上の生涯の中で弟子たちに告げた事、そして、この地上で最も大切なことは2つだけだと言われました。それは、神を愛すること、そして人を愛することです。ペテロは、イエス様と生活を共にしてイエス様の姿をいつも隣で見ていました。罪人を招き、共に食事をして、人に見下され相手にされない人達と共に交わりを持ちました。イエス様は弟子たちに自分の敵を愛しなさいと言われるほど、愛を形にしていくことを教えていったのでした。つまり、「神の前における良心」というのは、神の愛を実践することです。パウロもローマ書13章7節でも同じことを言っていますが、彼は、「自分の義務を果たすように。」と書かれています。そして、その愛を選択していく時に、主は私たちを砕き造り変えて、品性を整えてくださるのです。

ここでも何度か話をしましたが、神学校時代色んな人に出会いました。そして、私が卒業した北海道の神学校は、海外からの学生が入学してきますので、それぞれの国の文化がそのまま寮の中に入ってきます。日本人同士でも生活習慣の違いがあると思いますが、海外だとなおさらその違いが多くあります。しかし、どのような人が入ってきても、寮の決められたルールや掃除の仕方がありますので、皆がその寮の決まりに従わなければなりません。特に寮の中では細かい決まりがありましたので、入学した学生は驚いてしまいます。例えば、水を節約するためにシャワーの使う量が決められていたり、食事は必ず食堂でしなければならなかったり、男女が隣同士で車に乗ることが出来なかったり、食堂の冷蔵庫に自分の物を置けるのは一週間までだとか、みんなが使う食器用布巾は畳んでしまうなど、様々でした。そのルールに嫌になった海外からの学生が私に言ったのは、「なぜ、食器用布巾は角を揃えて畳まなければならないのか？」でした。なかなかその学生は納得いきませんでし、その他の学生も、寮の規則に反発するとも現れて、最後の学年は自分の愛をとても試された時間でした。しかし、その時に語られたことは、たとえ相手に非難すべきところがあったとしても、そこで自分も相手を裁いたり赦さなかったりすることは、自分も神さまに罪を犯しているのだということを知りました。それがパウロも言っていたように、「自分の義務を果たしていくこと」です。
そしてペテロは21節で、あなた方が召されたのは、実にそのためです。とさえ言っています。私たちが救われたのは何も人生を豊かにすることが目的ではありません。この新しくされた命を用いて神様のために生きることが目的です。私たちがイエス様の愛を実践していくことが、天にあげられた時に神様からその報いを受けるのだとペテロはここで言っているのです。

そして、そのモデルとしてペテロは、イエス様の十字架の御業を取り上げています。
2:21 あなたがたが召されたのは、実にそのためです。キリストも、あなたがたのために苦しみを受け、その足跡に従うようにと、あなたがたに模範を残されました。
2:22 キリストは罪を犯したことがなく、その口に何の偽りも見いだされませんでした。
2:23 ののしられても、ののしり返さず、苦しめられても、おどすことをせず、正しくさばかれる方にお任せになりました。
2:24 そして自分から十字架の上で、私たちの罪をその身に負われました。それは、私たちが罪を離れ、義のために生きるためです。キリストの打ち傷のゆえに、あなたがたは、いやされたのです。
私たちがその愛を実践していくことがどれほど難しいのかイエス様は知っています。なぜなら、イエスさまも同じ苦しみに合われたからです。イエス様が十字架に掛かって処刑される時、あらゆる苦しみの中を通りましたが、その中の一つは孤独との戦いでした。イエス様はいつも一緒に時間を過ごしていた弟子たちが12人いました。パンを食べたり、一緒に船に乗ったり、山を登って聖書の話をしたり、神様を慕う者達が周りにいつもいて、とても楽しい日々を送っていたと思うのです。しかし、イエス様が言われたことが本当になったとき、一人はお金欲しさに裏切り、ある一人はイエス様を3度否定し、あんなに愛を注ぎ続けた弟子たちは逃げてしまい、十字架に掛かる時は一人ぼっちでした。天のお父さんでさえ、イエス様の苦しみや嘆きに沈黙し続けたのでした。それはとてもつらいことです。またイエス様は、理不尽な扱いを受け、罪を犯したことがないのに、訴えられて鞭で打たれ、十字架に掛かられました。本来は私たちが受けなければならなかったものをすべてイエス様が負ってくださいまいました。何度も何度も、弁解するチャンスがありながらも、自ら進んでその十字架に向かっていったのは、私たちが罪から離れて、義のために生きるためです。私たちが与えられている愛です。ご自身を犠牲にしても私たちを優先する愛です。ペテロがこの個所で、しもべとしてその義務を果たす勧めとして、イエス様をモデルにしたのは意味があると私は思います。一つはイエス様がその模範を示されたからです。そして、もう一つは、私たちの与える愛の多くは、犠牲を伴わない愛が多いからです。
時間がないからとか、責任を負いたくないからとか、面倒だからとか私たちは何か自分が損しない程度に人と関わりを持とうとします。しかし、本当の愛は自分の時間や、労力を犠牲にして相手に尽くすことをいうのだと思います。

そして最後25節です。
2:25 あなたがたは、羊のようにさまよっていましたが、今は、自分のたましいの牧者であり監督者である方のもとに帰ったのです。
ペテロは、イエス様の姿を模範として生きる私たちを最後に励ましとして送った言葉は、この地上での歩みをひとりで歩むのではなく、イエス様が私たちの羊飼いとなって下さっていることでした。イエス様と共に行動していた頃のペテロは本当に、どうしようもないくらいおっちょこちょいな弟子でした。しかも、一度はイエス様を裏切り自ら背を向けて逃げてしまうような弟子だったのです。しかし、彼はイエス様の憐れみによってもう一度弟子として歩み始めます。彼を立ち上がらせたのは何だったのでしょうか？それは、イエス様の変わらない愛でした。ガリラヤ湖の岸辺でペテロのそばにそっと座って、裏切ったことを叱るのではなく、何が悪かったのか注意するのではなく、イエス様が彼に言ったのは、「わたしを愛するか」という問いと、「私の羊を飼いなさい」でした。その言葉は、ペテロを赦し、もう一度大事な神の働きへと召してくださった証でした。彼はその後の生涯を、赦された喜びを胸に心から主に仕える者となっていったと思います。
今日私たちは神様のために何をすることが出来るでしょうか？ペテロがこの手紙を通して伝えたように、神様の愛をどんな相手に対しても実践していきましょう。お祈りします。